足場の歴史と未来・日本でも古くから使用される建設や工事のためのシステム

人類は昔から足場を使ってさまざまな建造物を作ってきました。最初に足場が使われた場所ははっきりとはわかっていませんが、古代エジプトの「ピラミッド」や中国の「万里の長城」を作る際には足場が使われていたことがわかっています。この記事では、過去から現在に至るまでの足場の歴史について紹介すると同時に未来についても展望します。

足場の歴史

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地球上に文明が発生し、大きな構造物を作るようになり、現在の足場のような役割をするものが使われるようになりましたが、その頃にはすでにさまざまな形式の足場が存在していたようです。木や竹など、現在でも一部ではよく利用されている材質の足場や、レンガなどを積み上げたシンプルな足場もあったようです。
日本は、木がかんたんに手に入るため、足場にも木が多く用いられました。木は建材として使用されるだけではなかったのです。
伊勢神宮では、20年に1度神宮式年遷宮が行われますが、この祭礼においては古代さながらの丸太足場が組まれることがあります。ただ、日本で本格的に足場が使われるようになったのは、おそらく奈良時代のことだと考えられています。奈良時代の遺跡からは、足場の跡だと考えられる穴が見つかっていて、しかもその穴の痕跡から、足場の組み方にも複数のパターンがあったと考えられているそうです。平安時代になると、現在のとび職のように足場を組み上げて高い場所に登ることを表す「麻柱(あなない)」という言葉も生まれています。鎌倉時代の足場作りの様子は、松崎天神縁起絵巻という巻物にその様子が描かれています。すでにこの頃、足場の誕生からは長い時間が経過していますが、この描画を見る限りは、特に変化はなく技術が伝わってきていると想像できます。戦国武将の城は、今で言う高層建築ですが、もちろん城の建造にも木の足場が使われました。東海道五十三次にも、吉田宿の風景として、吉田城に足場が組まれている様が描かれています。江戸時代には城の大規模な修復工事なども行われていて、日本を代表する美しい城としても知られる姫路城は、江戸時代の改修を経て、新しい城に生まれ変わりました。この姫路城の改修工事では、足場と共に、すでに手すりも導入されていたと考えられています。城や寺院の修復作業等では現在も丸太足場がよく使われています。木材は軽く、丈夫で加工もしやすいという特徴を持っていて、日本においては足場用の資材としてとても便利なものでした。そのため、20世紀の中頃までは、足場のメイン資材として活躍しましたが、それから徐々に鋼の足場に変わっていきます。
アメリカでは、すでに20世紀の初め頃に鋼の足場が登場しています。それまでは欧米諸国でも足場と言えば木材でしたが、質が一定しないことが短所でした。質にバラツキがあることで強度を測りづらく、また、一度使用すると強度が落ちることも、安心感をそぐ要因となり、鋼の足場の一般化が急速に進みました。第二次世界大戦が終わると、先程も触れたように、日本にも鋼の足場が取り入れられるようになります。ちょうどこの頃、日本では森林資源保護の動きが活発になったことも、鋼の足場の広がりをアシストしました。現代の足場は、くさび足場が主流ですが、その頃から日本の技術者の間では鋼管製の足場の導入を検討していたとのこと。その後、すぐに現在もよく使われている門形建枠を使用するビティ足場が導入され、その後の日本の足場業界に多大なる影響を与えました。ただ、導入初期の鋼管製足場はコストが高く、どの現場でも使用できるというものではありませんでした。そのため、導入初期には造船所などの現場でのみ使用されていたようです。しかし、これ以降、中高層ビルの建築が盛んになり、それと同時に足場にはさまざまなスタイルが生まれ、だんだんと丸太足場の利用は減っていきます。
1970年代に入ると、足場作業の基準法となる労働安全衛生法が施行されます。作業床の幅や手すりの設置などの基準が明文化されることになりました。しかし、それまでの主役だった丸太の足場では、そこまで正確な基準に則って足場を作ることができず、これも足場の鋼化に拍車をかけました。ひび割れなどを原因とする転落事故も多くなり、鋼管製の足場はビジネスとしても大きく広がりを見せます。足場レンタルなどのビジネスが生まれたのは1980年頃のことです。

足場の未来

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ここまで、現代へとつながる足場の歴史について振り返ってみました。足場の歴史、そして進歩は、安全と効率の追求だったことは間違いありません。これからも、この二つの実現し難い要素を追求していくことに変わりはありませんが、足場にはどのような未来が待ち受けているのでしょうか?
まず、安全の追求に関しては、国や業界団体が中心になり、法制度の強化や自主規定の作成などを行っています。未だに日本の建築業界では、転落事故による多くの死傷者が出ています。その多くは、ルール通りに仕事をしていれば防げるものであるからこそ、足場作業に関わる人間から管理スタッフ、事務スタッフまで、職場の安全意識を共有して仕事に当たることが大切になります。
これまでに国が行ってきた足場に関する法制度の強化を見ると、安全意識を高める努力、そして仕事を管理する責任を持つ人間たちの監督責任や、足場自体の構造の弱みについて、その足りない部分を補うように強化が行われていることがわかります。今後もしばらくの間は、このようなポイントを中心に、ときどき法整備が行われると考えられますが、やはり、それに基づいて作業を行う意思を現場が持たない限り、事故は起きてしまいます。現場の責任者は、自分が持つ役割を自覚し、作業員の教育を徹底して、働く環境作りを行わなくてはなりません。
現在の足場は、軽量で丈夫、組み立てやすいなどの特徴があります。このような未来につながる新世代の部材が登場する一方、これまでによく使われてきた丸太の足場に関しては、職人がいなくなってしまうことが懸念されています。活躍の場が少なくなってきているとは言え、特殊な技能の持ち主としてまだまだ必要とされるので、若い人材の育成は大きな課題だと言えるでしょう。



足場の歴史と未来・まとめ

足場の歴史と未来の展望についてお話ししてきましたが、いかがでしたでしょうか?地球上に文明が発達し始めた頃にはすでに存在していた足場。日本でも奈良時代以降、現代まで途切れることなくその技術は受け継がれ、進歩を続けてきました。足場の歴史は、安全と作業効率という、実現し難い要素を実現するための戦いだったとも言えます。安全第一はいつも優先されなければなりませんが、この二つの要素のせめぎ合いが、安全意識の向上と、新時代のすばらしい足場材の誕生につながることは間違いありません。足場業界に関わる人間すべてが未来の社会を作っていくという意識と責任を持つことで、明るい将来は必ず開けます。